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女帝と王妃と芸術の街 [書を捨てよ世界に出よう・90年代バックパッカー編]

夜行列車の旅も慣れてきたようでずうずうしくも爆睡できるようになった。

ヴェネチアを発った列車は早朝にウィーンに着いた。さすがドイツ語圏ともなると時間通りだ。

イタリアではユースを利用していなかったが、ここからはユースにお世話になろう。 

探しながら石畳の道を車輪の付いたバックパックを転がして歩いていたら、車輪が取れた。

仕方ない、ここからは背負うことにする。

・・・どこをどう探しても見付からない。道行く人に尋ねてもドイツ語はさっぱりわからない。ドイツ語で“かえるの歌”なら歌えるが意味がない。それに「舞姫」の豊さん並みに愛の言葉を囁くぐらいならできるが勘違いされても困る。

「人の一生は重荷を背負って遠き道を行くが如し」ウィーンの街角で家康の言葉が身に沁みる。

諦めてタクシーに乗ったら意外に遠かった。でもタクシーなんて楽な手段を使った自分に敗北感。バックパッカーたるもの自分の足で行くのが基本である。無念。

さて、荷物を置くとシェーンブルン宮殿に向かう。途中列車で話をしたイギリス人が“シェーンブルン”は“美しい泉”という意味だと教えてくれた。成程。

どうしてもヴェルサイユ宮殿と比較してしまうが、こちらのほうが品良く落ち着いていて質素にさえ見えた。生真面目なフランツの影響だろうか。

シシー(エリザベート)のトレーニングルームやらフランツ執務室を見ながらしばし「エリザベート」の世界へ・・・。

シェーンブルンはヴェルサイユ宮殿を模したというだけあってよく似ている。鏡の間もあったが、ここは6歳のモーツアルトがアントワネットにプロポーズした所らしい。トート閣下は見えなかった。(当たり前である。)大広間の天井画はマリアテレジアを中心に据え描かれていた。イタリアのフレスコ画だったらここは神の位置。女帝の力を感じさせる絵である。

それにしても・・・

マリアテレジアの末娘マリーアントワネットはずっとここに戻りたいと願っていた。一方でシシーはここに寄りつくことがほとんどなかった。歴史の流れの中に様々な女性の姿を見る思いである。

その後美術史博物館にてブリューゲルとルーベンスの絵を見て少しワクワクして、ベルヴェデーレ宮殿(オーストリア美術館)の上宮にてクリムトの絵を見る。新鮮で斬新だがこの空間にはそぐわない気がする。

ユースに戻り一日目を終える。

続く二日目。

Secessionに行く。分離派と呼ばれる人たちが自分たちで資金を調達して完成させたといわれる建物は、金色の玉ねぎのようなものが乗っていてユニークだ。この建物が国立オペラ座前にあるというところに政治的なメッセージを感じる。

地下の一室がクリムトの壁画で埋められているのだが、これは圧巻。作品名は「ベートーベン・フリーズ」。音が無いのに音が聞こえてくるようだ。耳の聞こえないベートーベンが見た音の世界のようなクリムトの叫びのような・・・。世紀末芸術の殿堂と言われるこの建物にふさわしい。正直、感動で震えた。

午後、王宮宝物館でゴージャスな王冠やら何やらキラキラした物を沢山見て、カプチーナ教会地下に移動。ここはハプスブルグ家の霊廟で、立派なマリアテレジアの棺と共にシシー、フランツ、そして息子のルドルフ3人の棺が仲良く並んでいた。「エリザベート」のオープニングは成程この場所から始まったのかと納得する。亡くなってようやくこうして家族が一緒になれた。フランツの棺に向かって「よかったね。」と声をかけてみる。

それにしても霊廟に私一人。生きた人間のほうが少ないってどうよ。沢山の棺に囲まれてしばらくそこに立っていると少し息苦しくなってくる。トート閣下がお出ましになる前に立ち去ることにしよう。

歴史に翻弄されながらも女帝と王妃の力を見せつけた王室、そして生と死の芸術の街、ウィーン。

ユースで得た情報から次の移動先を決める。

次はザルツブルグへ。


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コメント 3

でるふぃ

こんばんは!旅行記、興味を持って拝見しています。
私もシェーンブルグ宮殿に行きたいです。
スイスまでは行ったのですが、オーストリアは行ってないんです。
ウィーンへは、祐飛さんも旅行なさってました。
一路さんは、ザッハトルテを召し上がってました~♪

自分の今日の記事で、マリーアントワネットについて、
ちょっと、ふれたので、関連としてこちらのブログにリンクつけさせて、
いただいたのですが、よかったでしょうか?

これからも、楽しく、お付き合いくだされば、ありがたいです。
旅の日記も楽しみにしています。
by でるふぃ (2008-09-19 21:56) 

プルミン

タイミング良かったみたいですね。花組全ツはアラン編ですが、ちょうど初日に合わせたような記事になった(?)ようで良かったです。

一路さんの話が出たので・・・内野さん好きの母が先日ふと、「いっちゃんがお母さんだったらきっとすごく賑やかに違いない。」と申しておりました。

私はリンクしないでやっていますが、こんなブログでよければどうぞリンクなりなんなりして下さいませ。
by プルミン (2008-09-20 08:39) 

でるふぃ

ありがとうございます。
一路さんのことを、いっちゃん!と呼んでくれるお母さま、
素敵な人だ~、 久しぶりに聞く呼び名なんで、うれしいな。
きっと、高らかな笑い声の響く、明るい家庭を、
お2人で作っていらっしゃることでしょう。

上の記事の、わんこくんのポーズに、笑ってしまいました♪
癒されます。
by でるふぃ (2008-09-20 23:33) 

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