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舞台装置のような街 [書を捨てよ世界に出よう・90年代バックパッカー編]

本日も早朝から行動開始。

フィレンツェの街を少し散歩してから駅に向かう。

ウィーン行きの列車がヴェネチアに止まるというので、早速それ乗る。

私の座ったコンパートメントには米国からの親子が乗っていた。父と娘の旅行らしい。話によれば娘さんが小さい時旅行に連れて行ってあげられなかったので、娘さんが高校卒業をした記念にヨーロッパを列車で回ることにしたそうだ。娘さんは現代アーティストの道を目指しているそうで、インスピレーションを受けるためにアウシュビッツ収容所跡を見に行きたいと話してくれた。だがその言葉に不快そうな反応をする父親。

手元にある作品を幾つか見せてもらった。道具は使わず手に絵の具をつけて直接キャンパスに描くらしい。抽象画というのかコンテンポラリーというのか・・・暗い。黒い線が不規則に並ぶその絵には光が無い。タイトルを勝手につけるなら“絶望”だろうか。無神論者であるサルトルを尊敬しているという話をしてくれたのだが納得である。

キリストオンパレードの国イタリアをこの18歳の娘さんはどんな視点で見ていたのだろうか。あの後アウシュビッツに行って何を見、何を感じたのだろうか。彼女が今どのような道を歩いているかは知る由もないが、その後の作品に少しでも光があることを祈る。

さてヴェネチアである。水に浮かぶ都。

ちょうど大きな会議があったようで宿はどこも満杯。それでもなんとか押さえることができたので荷物を置いて早速歩いてみる。

苔むした小道を行くと壁。別の道を行くと水辺。行き止まりの連続。継ぎ接ぎだらけの建物。ゴンドラが通り過ぎる度に聞こえる静かな波の音。

その曲がり角を行けば仮面をつけ煌びやかな衣装を着た人たちが現れる。そんな幻覚を見る。

非日常的な空間。そして閉鎖的な空間。

顔を隠したマスカレードはこの舞台装置のような空間に相応しい。

サン・マルコ広場で思い出した。なつめさん(大浦)時代の花組公演、「ヴェネチアの紋章」。クエックエックエークエックエッ♪ という歌と共に。カサノバが幽閉されていた牢獄を見て自由気ままにアバンチュールを楽しんだカサノバを想像しながら、そう言えばしめさん(紫苑)時代の星組公演で「カサノバ夢のかたみ」っていうのもあったなぁ・・・なんてことも思い出す。これをヅカ病と世間一般では言う。

一泊して翌日ムラーノ島に向かう。定期船から遠くにアルプスの山々が見える。

ムラーノ島にはガラス工房がある。建て込んだヴェネチアの街で火事でもあれば大変だということからガラス職人はこの島に移されたらしい。

さすがはガラス職人の街、小さな教会にあったシャンデリアの豪華さに度肝を抜かれた。そう言えばここに来てからキリスト色をあまり感じない。

引き返してサン・マルコ広場近くで食事をする。味はまあまあ。停泊しているゴンドラを背に国際電話をかける。宿に戻ると荷物を取り、駅に向かう。夜行列車で次に向かう先は決まっている。

ミラノ→ローマ→ナポリ→ローマ→フィレンツェ→ヴェネチアとイタリアの主要都市は足早に回った。キリスト色どっぷりでたっぷりになった。過度は何にしても拒絶反応を引き起こす。そろそろイタリアを出たかった。

音楽の都ウィーンに向かうことにしよう。


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