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青の世界はカオスだった。 [書を捨てよ世界に出よう・90年代バックパッカー編]

ナポリ2日目。

前日の宴の興奮が冷めやらないままカプリ島に向かう。本日の目的は「青の洞窟」。定番。

まずは最寄駅から定期船で島に向かい、そこから小舟に乗り換えて洞窟付近へ。更に手漕ぎボートに乗り換え洞窟内へと入っていく。洞窟の入り口は狭くて低いので入る瞬間は頭を下げる、それでも無理ならボートに寝そべる。波の高さにもよるがとにかく狭くて低い。

中に入ると神秘的な青の世界が広がる。太陽の光と青い海が作り出す芸術である。

ボートを漕ぎながらサンタルチアを歌ってくれるのは良いのだが、同じようなボートが数珠繋ぎに洞窟内に入ってきて、ハウリングを起こしている。カオス。

イタリアらしいと言われればそうなのかもしれないが、こうなるともはや芸術ではなくどこかのアトラクションである。ローマ皇帝が避暑地として使っていたころには考えられない賑わいだと思う。そう思いながら遥か遠くに意識を飛ばしてカオスからの脱出を試みたが、一瞬にして洞窟から出てしまったので無理。

とにかく素晴らしい、それは間違いない。ただ落ち着かない。観光資源とはいっても色々とカオスすぎる。壮大なスケールの芸術作品を前にカラオケを大音量で聞かされた挙句、その歌に対してチップを要求されたようなそんな気分。このギャップにめげる。本物を前にして、偽物を見ているような感覚。「ここは居酒屋、青の洞窟だよ。」と言われても信じてしまうかもしれない。そんなことを思ったら神秘的な青が、蛍光塗料のような気がしてきてしまった。勿体ないことである。

カオスなスポットからカプリ島に戻ると定期船に乗りスパッカ・ナポリへと向かった。高級リゾート地から移動するとその対照的な風景にホッとする。江戸下町度の高い小市民にはこれぐらいの場所がちょうど良いのかもしれない。狭い路地を歩きながら頭上を見れば路地をまたいで洗濯物を干しているようなそんな生活感漂う下町の風景がある。ここでランチをとることにした。

地元の人たちしかいないような小さな店で食べた魚介類のピザ、パスタ、リゾットは美味。その前に食べ過ぎ。一応まとめて3食のつもり。無理。でも美味。食べられんのかよって顔をしてる店の人にBuono(美味)連発。で、完食。やる時はやる。(自己満足。)

美術館もお城も閉まっていたのでナポリ中央駅付近を歩いてみる。後ろから誰かが付けてくる気配がするのでしばらく様子を見ていた。ショーウィンドウに男が映る、背中のバッグを狙っているようだ。少し歩いて止まると距離を置いて男も止まる。また歩き出すと男も歩きだす。これは面白い。ゆっくりと歩いて近づくタイミングを待った。そして男が背中のバッグに手を伸ばした瞬間、振り返った。折角なので「何も入ってないよ」と空っぽのバッグを見せてやった。ら、ブラボーと小さくつぶやきながら両手をあげて後ずさりしながら走って逃げて行ってしまった。

褒められるのも悪くはないが、これではまるでおとり捜査のようではないか。今までどれぐらい成功しているのかわからないが狙った獲物が悪かった。悪いが世の中そううまくはいかないのだよ。諦めろ。

ホテルに戻りナポリの2日間を総括する。

ポンペイの赤(壁画の赤)とカプリ島の青。高級リゾート地と貧しい地区。熱い太陽の下にカオスな人間模様がある。火山と海と熱い太陽に愛された陽気な人々が暮らすナポリは、タイムマシンで出会った不思議な青年の姿と共に特別な場所となった。

ふと現実に戻ってトーマスクックと睨めっこ。そしてまた無茶なスケジュールを立てる。なぜそうやって自分を追い込むのだろう。性分。とにかく明日は始発列車でローマに向かう。

続く。


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