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束の間のスイス [書を捨てよ世界に出よう・90年代バックパッカー編]

パリにサヨナラして夜行列車に乗り、しばらくしてからエッフェル塔に行くのを忘れていた事に気付く。まあ仕方ないそんなこともある。(二回目。)(「パリの空よりも高く」観劇後であれば最優先で行っていたことだろうが、まだこの頃にはやっていなかった。残念。)

コンパートメント一人貸切状態で向かったのはスイスの首都ベルンである。中世ヨーロッパの街並みを残すベルンには早朝に到着した。まずはフランス通貨からスイス通貨に換金し、ユースホステル探しから始める。仕事に向かう人たちの流れと逆行した形で駅周辺から街を少しずつ外れていく。大きな荷物を背負ってひたすら歩く。平らな道ばかりではないのが寝不足の体には辛い。ちょっとした丘のようなところをひたすら下りて行ったところにユースがあった。

チェックインにはまだ早いのでサインだけして荷物を置く。これで野宿の心配はなくなった。さて身軽になったところで街を少し歩いてみる。まだ早すぎてどこも閉まったままだ。少し遠出してみるか。眠い目をこすりながらトーマスクックと睨めっこする。

ちょうどこの頃、「エリザベート」がマイブームになっていた。雪、星、宙組と観てきてちょっとした地名にも敏感に反応する状態であった。そんなわけでレマン湖どうよ。と急に盛り上がる@ベルン朝の街角にて。レマン湖と言えば、イタリア人テロリスト、ルイジ・ルキーニがエリザベートを殺害する場面に登場する。舞台となったのはジュネーヴのレマン湖畔なのだが、そこまではこだわらない。とりあえず一時間ほどで行かれるローザンヌに向かった。

北京でオリンピックが始まったところだが、ローザンヌには国際オリンピック委員会の本部がある。何も知らずにローザンヌ駅に降り立って初めてここがオリンピックの首都と呼ばれている事を知った。国際バレエコンクールでローザンヌの名は聞いていたが、オリンピックのほうは知らなかった。

さて、ここまで旅のメモを見ながら書いているのだが、このメモには「今レマン湖の船の上で書いている。」とある。(海馬が軟弱なのですぐに書き残しておく病。)この船というのはローザンヌからフランスのエビアンに向かう定期船である。そう、あの水で有名なエビアンの町はここにあるのだ。エビアンで降りることなくただ往復しただけなのだが、湖を挟んで国境を越えるというのもなかなか面白いと思った。

ローザンヌの街を少し歩いて大聖堂にも足を運ぶ。残念ながら閉まっていたので外観だけ見学してベルンに戻る列車に乗る。ユースにチェックインするとチーズフォンデュを求めて再び街へ出る。以前ロンドンに一週間ほど滞在した際に、スイス会館にほぼ毎晩通いチーズフォンデュ&アプフェルシュトゥルーデル(アップルパイ)三昧だった日々を思い出す。ここは本場(アプフェルシュトゥルーデルはドイツのお菓子だが)、さすがに美味であった。久々にちゃんとした食事をとった。

そんなこんなでパリからの夜行列車で眠れないままナチュラルハイな状態で過ごしたスイスの1日目は終わる。心地よい山小屋のようなユースで部屋の仲間たちと情報交換をして、翌日に備える。明日はヨーロッパの最高地点にある駅、ユングフラウヨッホに向かう。

さて、スイス2日目である。ベルン駅でコーヒーとヨーグルトの朝食。そこから三回ほど列車を乗り換えていよいよ登山鉄道に乗る。4人掛けの席の隣に座った旅行者がアメリカの大学でコンピュータサイエンスを教えている先生だった。とにかくひたすら喋り続けている。私の前に座っていたドイツ人夫妻がしばらく相手をしていた。

登山鉄道は山頂に行くまでの間ほとんどがトンネルの中。その代わり途中の展望台(二か所)で5分ぐらいずつ見学タイムがある。折角なので列車から降りて雪山を眺める。山頂に着くとスイスの旗が立っていた。そこで写真を撮るとまさに登山家気分である。列車に運んでもらって登山家気取りとは楽なものだ。

Top of Europeの駅に氷の宮殿やら氷でできたオブジェがあったことよりも、日本の円柱型ポストがあったことに驚く。どうやら富士山5合目にある郵便局と姉妹提携しているらしいのだが、そのせいか気がつけばどこもかしこも日本語だらけである。こんなところで日本に出会うとは意外であった。

(ちなみに同じ年の夏、初めて富士登山をした。夜出発してご来光を拝んできた。一年の間にヨーロッパ最高峰にある駅と日本一高い山の両方に登ることになろうとは。貴重な経験をした。)

ベルンに戻り2日目の夜も同じユースに泊まるが、メンバーはほぼ入れ替わっていた。皆長居はしないようだ。オーストラリアから来ていた女の子が最初は16キロしかなかった荷物がイタリアで40キロになってしまったと嘆いていた。どうやら買い物に目が無いらしい。私はと言えばアレッシーの蠅たたきを買ったぐらいで他に土産物屋に入ることもなくここまで来た。それでも荷物は十分に重い。

明日はいよいよイタリア、ミラノへ向かう。 続く。


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